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イン・ザ・プール/空中ブランコ

奥田英朗 著 

イン・ザ・プール」2002年5月発行 文藝春秋社
所収作品:初出
・イン・ザ・プール ・・・・ オール読物 平成12年 8月号
・勃ちっ放し ・・・・・・・・・・ オール読物 平成13年 8月号
・コンパニオン ・・・・・・・・ オール読物 平成13年11月号
・フレンズ ・・・・・・・・・・・・ 別冊文藝春秋 平成14年1月号
・いてもたっても ・・・・・・ オール読物 平成14年 3月号

空中ブランコ」2004年4月発行 文藝春秋社
所収作品:初出
・空中ブランコ ・・・・・・ オール読物 平成15年 1月号
・ハリネズミ ・・・・・・・・ オール読物 平成15年 7月号
・義父のズラ ・・・・・・・・ オール読物 平成15年10月号
              (「教授のズラ」加筆改題 )
・ホットコーナー ・・・・ オール読物 平成15年 4月号
・女流作家 ・・・・・・・・・・ オール読物 平成16年 1月号

伊良部一郎という一風変った精神科医が登場するシリーズもの。それぞれ一話完結の短編になっているので、どこから読んでも楽しめます。「空中ブランコ」は昨年第131回直木賞を受賞して注目され、明日27日(金)夜9時、フジTVでドラマも放映されるようです。

30代半ばの伊良部一郎はバツイチでマザコン気味の精神科医。診療室ではどちらが患者なのか判らない様な対応を見せる、頼りなく変人じみた謎(迷)医? 天然というのか、子どもじみた好奇心と執着心、意外な行動力で、患者の問題に深く関わっている活動に自分自身も熱中し、それが結果として患者を癒して行くことに。謎医は名医だったのか、それとも只の物好きな変人なのか。当事者にとっては深刻な問題が、伊良部の極端な行動を通して面白く描かれ、読者をひき付けます。
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by hitokohon | 2005-05-26 21:53 | 文芸・書評

「のだめカンタービレ」12巻

二ノ宮和子 著  2005/5/13 発行 講談社コミックスKiss

2001年から講談社のコミック雑誌「Kiss」に連載されている、クラッシク音楽ラブコメディ?

主人公の野田恵(通称のだめ)はピアノ科の音大生。本能の赴くままに人を惹きつける演奏をするかと思えば、楽譜通りに演奏できないという、天才なんだか落ちこぼれなんだか判らないピアニスト。物怖じしない性格で前向き、かと思うと前後不覚に地の果てまで落ち込む極端な性格。その上超片付けらない女で、奇行に走ることもある変人と思われる節も・・・。

そんな「のだめ」に一目惚れされたのが、上級生の千秋真一。著名ピアニストを父親に持ち、本人も指揮者を目指す優秀な音大生である彼は、ルックスの良さとオレ様な性格で学内でも有名人。皆に近寄り難いと思われているその千秋先輩に、何の躊躇もなく接近して行くのだめ。次第にのだめペースに嵌って行く千秋と、彼の影響で演奏家としての自分に目覚めていくのだめ。やがて二人はパリに留学する事に。

12巻では、指揮者コンクールに優勝した千秋が、パリでのデビュー公演に臨むことに。一方のだめは、学校でのレッスンに自信を無くしドツボな日々。そんなのだめを正攻法で叱咤激励する千秋に対し、「彼女に、余計な事を教えるな!」と怒鳴りつける、屋根裏部屋の謎の画家。そして、日本にいた頃のだめに片思いしていたこともあるオーボエ奏者の黒木くんが現われたり、ユニークな登場人物たちに囲まれて、二人の留学生活は前途多難? 今後の物語とふたりの関係の進展が楽しみです。
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by hitokohon | 2005-05-22 22:21 | 漫画・アニメ関連

命を救う「ふれあい囲碁」

安田泰敏 著 日本放送出版協会 2004/11/10 発行 生活人新書124

以前紹介した「子どもと始める囲碁」(岩波アクティブ新書)の著者、プロ棋士安田泰敏九段の著書です。「子どもと始める囲碁」の中でも紹介されていた、保育園や幼稚園、福祉施設などで安田さんが行っている、囲碁を通してコミュニケーションの楽しさを伝える活動について書かれています。

安田さんはプロの棋士ですが、この「ふれあい囲碁」の活動では、囲碁の技術的向上についての指導はしていません。全くの囲碁初心者の幼児や小中学生、障碍をもった方々などに、対戦相手が居なければ出来ない囲碁というゲームの基本ルールを教えます。石を置くことによって自分の意思を表現し、石を置くことによって人とふれあう喜びを感じてもらおうと云う試みなのです。

いじめを苦に自殺した中学生のにニュースを見て、孤立して苦しんでいる人を救いたい、という一心で安田さんはこの「ふれあい囲碁」の活動を始められたそうです。
国は、「命の大切さ」や「心の教育」に力を注いでいますが、理想や理屈だけでは一人の命も救えません。
子どもたちが望んでいるのは、「自分の傍にいてほしい」「自分の話を聞いてほしい」「自分のことを見守ってほしい」ということなのです。
と、この本の「まえがき」に書いておられましたが、安田さんが「ふれあい囲碁」で行っている指導の姿勢は、まさにその子どもたちの望みを叶えるように、相手に寄り添い見守る事でした。決して囲碁を教え込む事ではないのです。読み進めながら、そんなに上手く行くものだろうか、という疑問も感じましたが、現実に奇跡はいくつも起きたようです。

そんな中で出会ったある保育園児の少女は、囲碁の先生になって「世界の人に囲碁を教えて、みんなで仲良く幸せになりたい!」と将来の希望を話したそうです。それがキッカケとなって、安田さんの「ふれあい囲碁」の活動は海外にも広がる事になりました。これは、小林光一九段が著書「棋士ふたり」に書かれていた、女流棋士であった亡き妻禮子さんの、囲碁普及への思いにつながるものだと感じました。

囲碁についてより、子どもと向き合う姿勢、人と関わる思いを教えられる内容でした。
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by hitokohon | 2005-05-14 15:00 | 囲碁関連

ミカドの肖像

猪瀬直樹 著 2005/3/8 発行 小学館文庫

自blog「網上徒然話」からの転載です。(加筆訂正有)

ここ数年は、作家としてより道路公団問題でのマスコミへの露出が多かった猪瀬直樹さんですが、彼の作家としての出世作と言えるのが、1986年に小学館から出版された「ミカドの肖像」です。翌87年に「大宅壮一賞」を受賞し、ノンフィクション作家として広く世間に知られる事になりました。現在は同賞の選考委員もされているようです。

歴史好きだった私は、天皇を意味する「ミカド」というキーワードに反応してこの本を手にしました。出版されて間もない頃だったと思います。でも内容は私が想像した歴史モノとは大分違って、天皇そのものを扱ったのではなく、天皇というブランドがどのよう創り出され、守られ、また利用されているか、という検証でした。面白そうだったのですが、ハードカバー本は高くて買えませんでした。その後91年に「ミカドの肖像―プリンスホテルの謎」と題して小学館ライブラリー版(ちょっと大き目の文庫)になったモノを読みました。そう、サブタイトルにもなったように、この本の中で一番興味深かったのは、プリンスホテルに関する部分だったんです。それは、去る3月、有価証券報告書虚偽記載などで逮捕された、前コクド会長堤義明容疑者の父康次郎氏が、いかにしてあのプリンスホテルグループを創り、西武グループ繁栄の基盤を固めたのか、という話なんです。20年も前の著作ですが、中々旬な話題を扱っていると思います。

残念ながらライブラリー版は品切れ状態、と思ったら、完全版のこの文庫版が出たようです。そうですよ、今売らなくて何時売るのこの話題本。新装版出さなくても、ライブラリー版を重版すればいいのに、と素人の私でも思ったくらいですから。

この本を読む前の独身呉服屋店員の頃、年に何度かある展示会の内1回は赤坂プリンスホテル旧館を使うのが恒例で、私も中に入っています。この旧館はホテルといっても文明開化の頃に建てた様なお屋敷の造りになっており、展示会では全館貸切で使用していたと記憶しています。入社して初めての展示会もここだったので、お客様を迎える為にそのお屋敷の玄関に並んでいて、緊張して足が震えたのを覚えています。

ビルになっている新館の横にひっそりと建っている、という感のある旧館でしたが、きっと創業当時の建物を大切にしているのだろう、と当時は思っていました。でも「ミカドの肖像」を読んで謎が解けました。あの旧館は、まさにプリンスのお屋敷だったのです。検索してみたら近代建築散策というサイトに写真もありました。ここでも紹介されいるように、戦前は李氏朝鮮最後の皇太子のお住まいだったのです。朝鮮の皇太子が何故日本に住み、日本の皇族の女性と結婚していたのか、という戦前の歴史もこの本で知りました。

本書によると、戦時下の日本にあって、終戦後の土地高騰を予想していた堤康次郎氏は、空襲警報が鳴る中でも電話をかけまくって土地を買いあさっていたそうです。そして戦後、旧皇族が皇籍離脱させられ、天皇家にも固定資産税が課せられる事になった時、現金が無いだろう彼らから屋敷を買い取っていたのも康次郎氏でした。東京にあるプリンスホテルは、ほとんどが旧皇族の屋敷だったところで、赤プリ旧館のようにお屋敷そのものを利用している所もあるわけです。プリンスホテルという名も、そこからの命名だそうです。

この本を読んだ当時は、まだバブルが崩壊しきっていない頃でした。成功する人は考える事が違うわ、と感心するやら恐れ入るやらでしたが、今読むとまた違った感慨があるかもしれません。
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by hitokohon | 2005-05-13 21:39 | 歴史・ノンフィクション