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対話のレッスン

平田オリザ著 2001/10/20 発行 小学館
1997年~2000年『本の窓』連載の「21世紀との対話」に加筆修正。

著者の平田さんは、劇団「青年団」を主宰する劇作家であり演出家。助教授として大学で教鞭をとる傍ら、高校で演劇を取り入れたワークショップも行っている。話し言葉を使って作品を表現し、話し言葉を指導する方である。

この本では最初に、話し言葉を「演説」「談話」「説得・対論」「教授・指導」「対話」「挨拶」「会話」「反応・叫び」「独り言」に分類している。戯曲は、これらの様々な話し言葉を使って作品を構成しているが、中でも重要な要素となるのが「対話」であるという。

私がなるほどと興味を持ったのは、「対話」とは他者との新たな情報交換や交流であり、親しい者同士で交わされる日常的なお喋りである「会話」とは違うのだ、と説明されていたこと。それから「コンテクスト」について。この単語は初耳だったのだが、直訳すると「文脈」という意味だそうで、言語学では、個々人が使う言葉の内容や範囲を言うらしい。このコンテクストは、それぞれの年齢や家族構成、立場や地域文化の違いによって「ずれ」がある。色々な俳優が集まって演劇を作っていく時、その「ずれ」を認めたうえで、接点を見つけていくことが大切になってくる。他人の書いた話し言葉を語る俳優には、自在にコンテクストの幅を広げられる事が求められるのだ、ということ。

この2点について、今まで深く考えることもなく暮らしていたが、それだけに心に残った。他にも電脳社会における対話についてや、中島義道さんの「対話のない社会」(PHP新書1997/12/4発行)について触れた話も興味深かった。

まだ読み終えてないのだが、平田オリザさんと井上ひさしさんの対談集「話し言葉の日本語」 (小学館2003/1/1発行)も、戯曲を書く者の感性を通して見た「話し言葉」の今、が語られていて面白い。

( 追記 )
上を書いた時には全然気が付いていなかったのが、中学2年の息子が使っている国語の教科書(三省堂)に、平田さん書下ろしの「対話を考える」という文章が載っていた。「対話劇を体験しよう」という課題の導入として、対話と会話の違いや、対話が苦手な日本人の文化的背景などにも触れている。
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by hitokohon | 2003-12-01 00:00 | 子育て・教育

鉄腕アトムは電気羊の夢を見るか

布施英利(ひでと) 著 2003/3/15 発行 晶文社

今年夏、講演会でお話を聞く機会があって、布施英利さんという方を初めて知った。美術評論家として多数の著作があり、現在は母校の東京芸術大学で助教授もされている。専門は美術解剖学というあまり聞きなれない学問で、芸大を卒業した後に、「バカの壁」で今年注目の養老孟司さんに師事して解剖学も学んだという。

芸術家であり科学者でもあり、また人体を知る為に解剖も手掛けたというレオナルド・ダ・ビンチに興味を持っているというお話で、美術解剖学というものが少し解ったような気がした。そして、鉄腕アトムを見て育った世代でもある布施さんは、マンガ家であり医学者であり、未来を想い描いた科学者の目をも持った手塚治虫にも興味を惹かれたようだ。

この本は、映画「ブレードランナー」の原作でもある「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」( フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫 )から、題名をつけている。私は映画も小説も見てないのだが、汚染され生物の少なくなった地球で、人工の電気羊しか持たない主人公が、本物の動物を手に入れるお金欲しさに、賞金の懸った逃亡アンドロイドを追いかけるお話しらしい。 アンドロイドでもある鉄腕アトムを通して、現代のロボット技術やクローン技術について語りながら、マンガというメディアを人間がどう認識しているかという事にも触れている、ちょっと面白いマンガ論でもある。

書店で見つけられた布施さんの著書はこれ一冊だったので、他は図書館で借りて読んだ。「絵筆のいらない絵画教室」(紀伊国屋書店、2000年)、「美術館には脳がある」(岩波書店、1996年)や、ちょと出版が古いが、コンピュータ・アートを評論した「電脳美学」(筑摩書房、1991年)なども面白かった。
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by hitokohon | 2003-12-01 00:00 | 漫画・アニメ関連

絵筆のいらない絵画教室

布施英利(ひでと) 著 2000/11/10 発行 紀伊国屋書店

布施さんは、美術評論家として多数の著作があり、母校の東京芸術大学で助教授もされている。専門は美術解剖学というあまり聞きなれない学問だそうだ。

本書はNHKの「ようこそ先輩」という番組で、出身小学校の出向いて指導した総合学習について書かれている。私のように総合学習って何だろうと疑問に思う親や、先生方にも是非読んで欲しいなぁ、と思った。魚の絵を描くという課題に取り組むにあたって、まず魚釣りに行く所から始め、その魚を解剖させる。その後で改めて生きて泳ぐ魚を観察させて、課題である魚の絵を描かせる。釣りに行く前、子ども達の頭の中のイメージで描いた魚の絵と、最後に描いた絵を比較しているところはとても興味深かった。

布施さんは、大学の解剖教室ではじめて人体解剖した日、解剖が終わって教室を出た直後に、目の前の階段を上がって行く人を見た。何気なく目にしたその人の動く足元に「生きている!」という驚きと感動を覚えたそうだ。「目の前の人が、生きて、動いている。そんな当たり前のことが、とてつもなくスゴイことに思えました。」その気持ちを何より子ども達に伝えたかったそうだ。
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by hitokohon | 2003-12-01 00:00 | 子育て・教育