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何日君再来物語

中薗英助 著 1988年2月 発行 河出書房新社
1993年6月河出文庫版も刊行された。

戦時下の中国を舞台にした小説も書いている著者が、時事通信社『世界週報』1986年4/1~87年1/20 連載していた、ノンフィクション。刊行にあたり改稿加筆。

「何日君再来」(ホーリーチュンツァイライ)という歌を聴いたことがあるだろうか。
もともと中国の歌だったが、1939年、渡辺はま子が「いつの日君来るや」、そして1940年、李香蘭(山口淑子)が「いつの日君また帰る 」のタイトルで歌って、日中戦争下の日本でも大ヒットした。タイトル通り、去っていった恋人の面影を慕いならが帰還を待つ寂しさを歌ったものだ。

私が初めてこの歌を聴いたのは、TVドラマ『さよなら李香蘭』のなかで、李香蘭役の沢口靖子が歌った中国語のものだったが、とても心惹かれる歌だった。初めて聴いた日本語版は、テレサ・テン。そして、日中戦争当時中国にいた著者が四半世紀を経て耳にしたのが、テレサの歌う懐かしい中国語版「何日君再来」だった。それが、この歌をめぐる物語を探る旅の始まりだった。

日中戦争当時、ふたりの中国人女優が歌い、日本人の歌手渡辺はま子と李香蘭が日中両国語で歌い、中国人にも日本人に愛された「何日君再来」。だが、戦争、文革を経て、この歌と歌い手達の運命も移り変わっていった。一曲の歌から、日中戦争と、その後の中国の時代の流れを物語る。
by hitokohon | 2002-09-01 20:48 | 歴史・ノンフィクション
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