中の精神

呉清源 著 2002/1/28 発行 東京新聞出版局 

1984年に現役引退した棋士呉清源九段の自伝的回想録。中日新聞・東京新聞の夕刊に2001年7月から10月まで、計90回の連載をまとめたもの。

著者の呉清源さんは、1914年中国生まれ。28年(昭和3年)14歳で来日、呉清源少年を「秀策の再来」と評した棋士瀬越憲作氏に入門し、日本でプロ棋士となりました。木谷実七段(当時)とともに「新布石」を発表して話題を呼び、「打ち込み十番碁」で一流棋士に全勝するなど、昭和囲碁界最強の打ち手といわれた棋士です。引退された今も、「21世紀の碁」の研究に取り組むなど、碁打ちとして精力的に活動されています。

川端康成との親交にもふれていますが、康成が観戦記を書いた本因坊秀哉名人引退碁で、解説を担当したのが呉清源さんでした。昭和28年には康成が「呉清源棋談」(『川端康成全集 第二十五巻』新潮社 平成11年10月発行に所収)を著しています。そしてまた、呉清源さんが本書の中で書いている秀哉名人のエピソードや人物評と、康成の『名人』を比べてみると、だいぶ印象が違うのが面白いです。

このように棋士として活躍する一方で、中国生まれの呉清源さんが日本で生きるには、とても大変な時代を経験されています。一緒に来日した親兄弟も、日中戦争の激化による中国人差別により帰国。家族は彼にも帰国を勧めましたが、留まって日本に帰化する道を選びました。国籍問題は、戦後も母国中国の中華人民共和国と台湾の分裂などにより、紆余曲折を経る事になり、色々とご苦労されたそうです。

昭和囲碁史とともに、昭和の歴史そのものを語っている回想録です。
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by hitokohon | 2004-07-01 15:43 | 囲碁関連
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